名字について

今年4月からスタートした相続登記の義務化に伴い、相続に関する相談やご依頼が増えております。相続登記においては被相続人の出生から死亡まで沿革がつく戸籍(除籍)謄本を取得することになります。依頼者の中には自分の親の古い戸籍を初めて見たという方も多くいらっしゃいます。日常生活において手書きで書かれているような古い戸籍をみる機会は滅多にないため、大変関心をもたれることが多いです。

戸籍に絡んで氏(いわゆる名字)について少し整理しておきます。婚姻や離婚に伴う氏の変更ついては民法に規定されています。現行民法において夫婦は婚姻の際に夫又は妻の氏を称すること、と定められています(民750)。そして、婚姻によって氏を改めた夫又は妻は離婚に際し、婚姻前の氏に復する、と規定されています(民767Ⅰ)。要するに離婚の際に何も手続きをとらなければ、婚姻前の氏に復帰するということとなります。もし、離婚の際に称していた氏を使いたければ離婚の日から3か月以内に戸籍法の定めるところにより届け出る必要があります。(民767Ⅱ)

離婚の場合は原則復氏し例外的に役所に届け出ることによって離婚に際し称していた氏を使うことができます。これと比較したいのが夫婦の一方が死亡した場合です。民法751条1項には夫婦の一方が死亡した場合、生存している配偶者は婚姻前の氏に復することができる、と規定されています。要するに夫婦の一方が死亡した場合、原則復氏しませんが、例外的に役所に届け出ることによって復氏することができます。ちなみにこちらに離婚に伴う復氏のような期間制限はありません。

配偶者死亡に伴う復氏はあまりピンとこないかもしれませんが、実務で戸籍を調査していると、何度か出くわしたことがあります。

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