2つの意味の「相続放棄」
「相続を放棄します。」というと2つの意味で捉えられることがあります。
1つは家庭裁判所に相続放棄の申述を行うこと。この場合、相続放棄をした方はそもそも相続人の地位を承継しません。承継しないということは被相続人の預金等プラスの財産のみならず、借金等のマイナスの財産も相続しないことになります。もし、被相続人の債権者から「被相続人の地位を承継したのだから、お金を払って下さい。」と請求されても、「私は家庭裁判所に相続放棄の申述をしています。はじめから相続人ではありません。よって、債務を承継していません。」と主張して請求を拒むことができます。
もう1つは遺産分割協議の中で、被相続人の財産は一切承継しませんという意味で使われる相続放棄。この場合、「相続を放棄します。」と言った方は相続人の地位を承継して遺産分割協議に参加していることになります。預金等プラスの財産は承継しませんと協議が成立しても、相続人の地位を承継しているので借金等のマイナスの財産は相続することになってしまいます。仮に被相続人の債権者から「被相続人の地位を相続したのだから、お金を払って下さい。」と請求されても、拒むことができないことになります。
同じ言葉でも違う意味で捉えられることがあるため、ご相談の中で「相続を放棄したいです。」とお答え頂いた方には「どちらの意味ですか?」と逆に質問するようにしています。